不動産の価値の配分について

目次

これまでは、借地権や底地、更地といった類型ごとに的を絞って説明してきました。今回は、これらの類型や手法の適用において度々登場する考え方の一つである価値の配分について触れていきたいと思います。

不動産価値の配分


私たちが、社会において生活し、活動する際にこの世は必ずしも公平ではないことは少なからずあり、何が公平かについては人それぞれで、形式的なものもあれば、実質的なものもあり、結論を一つに絞ることは容易ではありません。

例えば、一つのケーキを四人家族で分けるとき、単純に4等分するのがよいのか、甘いものが好きな妹には多くて、甘いものが苦手なお父さんには少なめに分けるのがよいと考えるのかは、各々の家族によって異なります。また、ケーキに加えて、食事まで含めて考えると更に問題は複雑になってきます。


不動産の鑑定評価の世界では、質的な妥当性までも考えることを衡平と表記し、形式的な公平とは区別しています。この衡平という概念は元々、法律の世界で用いられている考え方ですが、鑑定評価においても度々登場する概念になります。

そして、この当事者間の利益の調整を図る(=天秤にかける)考え方を利益衡量とよびます。

このように不動産の鑑定評価における「価値の配分」とは、形式的・表面的に均等に配分するのみではなく、両者間、あるいは、関係者間の置かれている状況、立場等を総合的に勘案し、実質的・本質的にも利益の均衡を図る観点から妥当な結論を導き出そうとする考え方に基づいています。

不動産鑑定評価基準には、不動産の鑑定評価について次のように述べられています。

「不動産の鑑定評価とは、不動産の価格に関する専門家の判断であり、意見である(中略)。(不動産の鑑定評価)はまた、この社会における一連の価格秩序のなかで、対象不動産の価格の占める適正なあり所を指摘することであるから、その社会的公共的意義は極めて大きいといわなければならない。」

不動産の鑑定評価は、究極的には不動産の適正な価格や賃料を求めることですが、その判断の結果である鑑定評価額は、依頼者及びその利害関係者、鑑定評価書の利用者等に留まらず、一旦、鑑定評価書が開示、提出等されると広範な第三者へも周知されること場合もあり、その判断にも影響を与えうるものであるということを表しています。

不動産の価値の配分を行うケース

以下は、実際に価値の配分を行うべきケースとして私が鑑定評価を行った例になります。

①不動産の併合又は分割における価値の増減分の配分

 ⅰ.隣地の併合又は分割

 ⅱ.底地と借地権の併合又は更地の各権利の分割

 ⅲ.貸家及びその敷地及び借家権の併合等

 ⅳ.区分所有建物及びその敷地の併合等

②建物及びその敷地一体としての減分価値(又は増分価値)が発生している場合の配分

 →建付地の鑑定評価、建物及びその敷地の一体減価の考え方

③収益用不動産における各構成要素への収益の配分

 ⅰ.価格の場合→更地の鑑定評価における土地残余法、※事業収益残余法

         事業用不動産の鑑定評価における収益の配分

 ⅱ.賃料の場合→賃貸事業分析法及び収益分析法の適用における純収益の配分

         差額配分法における貸主に帰属すべき賃料の差額分の配分

④複数の権利者からなる共有不動産における持分の配分

⑤立体的、平面的価値の集積によって全体を構成する場合の効用の配分

→区分所有建物及びその敷地(例 分譲マンション)の鑑定評価

  区分地上権等の鑑定評価(②のケースの一つでもあります)

⑥その他

まとめ

次回以降、今回紹介した価値の配分を行うべきケースについて、いくつかの項目をピックアップして説明していきますので、不動産鑑定士はどのように思考し、どのように結論に至るのか、より理解を深めていただけると同時に、今回の内容を目次として活用して頂き、鑑定評価のご依頼を検討されている場合の参考にして頂ければ幸いです。

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